2011年5月29日日曜日

iPad 用スタイラス Bamboo Stylus を試してみた



つい先日いよいよ発売された Bamboo Stylus, 早速買って試してみました。


■Bamboo Stylus とは?

http://wacom.jp/jp/company/news_detail.php?id=355
http://japanese.engadget.com/2011/04/19/bamboo-stylus/

B004XF0FQWWacom iPad/IPad2/iPhone4対応 描画、ポインティングに最適なタッチペン Bamboo Stylus CS-100/K0
ワコム 2011-05-27

by G-Tools

PC向けペンタブレットではおそらく業界最大手の Wacom が、満を持して投入してきた静電誘導式タッチディスプレイ用のスタイラスペンです。ペンタブレットの開発でおそらくこの手のスタイラスペンに関しては相当なノウハウがあるのではないかと思われ、非常に期待が持てます。プレスリリースで、特に以下のような点が既存のスタイラスとは異なると強調されています。
  • 手に持った時の心地よさと書きやすさを両立する重さと重心のバランス。
  • 上質なサテン調のブラックとシルバー色を採用し、高い質感を実現。
  • ペン先は主な他社製品よりも直径が約25%小さく、より自然で直感的な描画が可能。
  • スムーズで快適な書き心地を実現するペン先の実現。(磨耗した際には交換が可能)
  • iPadカバーに留めたり、ポケットに留めたりするなど、携帯や保管にも便利なクリップ。(脱着可能)

■最初に結論

良い点
  • 第二世代のシリコンペン先を採用している他のスタイラスペンと比べ、細くて滑りが良くしっかりとしたペン先。
  • サイズの割に軸がやや太めで、しっかりと握ることができる。
  • 上記の理由により、実物のペンと非常に近い筆書感覚が得られる。
  • クリップが丈夫で脱着可能。取り外してストラップを代わりにつけることもできる。
悪い点
  • 同サイズのスタイラスペンの中では圧倒的に重く、書く際に手が疲れる。
  • 第二世代のシリコンペン先を採用している他のスタイラスペンと比べ、感度がやや悪い。
  • 3000円という、やや高価な値段設定。

■外見、持った感触

まずは外見から。値段設定がやや高めで、かつBambooブランドの名前を冠していることからもわかるとおり、iPad向けスタイラスとしてはハイエンドを狙っている物と思われます。そのためデザインにも力が入っており、表面がiPadやMacのように梨地加工されています。単なる金属の棒という体の パワーサポート スマートペンプリンストンテクノロジー 専用タッチペン に比べ断然高級感があり美しく感じられます。

長さは12cmということで、他社のスタイラスと比べても数ミリ長い程度で標準的だと思います。軸は他社の製品に比べてやや太く、良くコンビニなどで売っているボールペンよりわずかに細い程度になっています。そのため手に持った際の感覚が非常にペンらしいです。また、重さが非常に特徴的で、他のスタイラスと比べて明らかに密度のある重さがあります。体感だと パワーサポート スマートペン より二倍近く重いように感じます。

上部とペン先はねじになっていて、それぞれクリップとペン先が取り外せるようになっており、メンテナンスのことを考えた作りになっているのが心憎いです。消耗品ではなく、長期間使わせる物という印象を受けます。また、取り外した上部のクリップの部分にストラップをつけて持ち歩くことも出来そうです。


長さ比較。左から右に短い物順。pogo sketch, スマートペン, Bamboo Stylus, oStylus


太さ比較。先ほどと同じ順序。pogo sketch, スマートペン, Bamboo Stylus, oStylus


■動作、書き味

買って最初に一筆書いてみた時にすぐ気づいたのが、まず感度が悪いです。ほとんど載せるだけで反応する超感度の パワーサポート スマートペン に対して、ほんの少しだけ力を込めないと反応しません。しかしながらペン先が細くてしっかりしており、iPadの表面を非常になめらかに滑ります。滑りがよいので実際に紙で書いているよりちょっと違う感じがしますが、ペンタブレットに慣れている人にはちょうどいいぐらいだと思います。先端がふにゃふにゃしてやや抵抗がある滑りの パワーサポート スマートペン とは対照的な印象です。

個人的には長時間書いていると疲れます。感度が悪く抵抗が弱いのと重いペンが相まって、腕の力を使うためだと思います。


実際に Noteshelf アプリ上で書いてみました。実際のペン同様、非常になめらかに書けています。


■まとめ

WacomとしてはiPad向けスタイラスのハイエンドモデルとして位置づけているこの商品ですが、実際に使ってみるとむしろ パワーサポート スマートペン と対になるような感じの印象を受けました。すなわち、以下のように棲み分けられます。

Bamboo Stylus をオススメする人
  • ペンに近い持ち味、書き味が欲しい
  • 細くてよく滑るペン先が何より欲しい!
  • 値段は高くても気にしない
パワーサポート スマートペン をオススメする人
  • 軽くて、書いていて疲れないペンが欲しい
  • 感度の良くて、実際のペンみたいに少し抵抗がある滑りのペン先が何より欲しい!
  • 値段は安い方がいい、または初めてスタイラスを試してみるので失敗しても後悔しない値段の方がいい
私自身はどっちを選ぼうか悩んでますが、せっかく買ったし、しばらくはBamboo Stylusを使ってみようかと考えてます。

-ObjC とか -all_load って何をやってるのか調べてみた

よく外部のライブラリやFrameworkをiOSのプロジェクトに取り込むときに、つけないと動かないからつけてねと言われる、 Other Linker Flag = -ObjC -all_load のフラグ。これって何をやっているのか今までずっと気になっていたので、ちょっと調べてみました。

こういうことらしいです。
http://developer.apple.com/library/mac/#qa/qa1490/_index.html
This flag causes the linker to load every object file in the library that defines an Objective-C class or category. While this option will typically result in a larger executable (due to additional object code loaded into the application), it will allow the successful creation of effective Objective-C static libraries that contain categories on existing classes.
このフラグは、Objective-Cのクラスまたはカテゴリを定義しているライブラリに含まれる、全てのオブジェクトファイルをロードするようリンカに促します。これによってたいていの場合実行ファイルのサイズが大きくなってしまいますが(アプリに追加のオブジェクトコードが読み込まれるので)、既存のクラスに対するカテゴリを含むObjective-C静的ライブラリを正しく使えるようになります。
へぇぇ!全く知らなかったです。ちなみに -all_load はというと、
-all_load forces the linker to load all object files from every archive it sees, even those without Objective-C code. -force_load is available in Xcode 3.2 and later. It allows finer grain control of archive loading. Each -force_load option must be followed by a path to an archive, and every object file in that archive will be loaded.
-all_load は全てのオブジェクトファイルを全ての認識できる静的ライブラリ(アーカイブ)から全部ロードしてくる(意訳)
とかそういうことらしいです。なるほどねー。

ということは -all_load はより強力な -ObjC に見えますが、実際には -ObjC は -all_load と違って上記に記載されているオブジェクトファイルのロードの挙動変化以外にも何かやっているようで、実際 -all_load -ObjC 両方指定してあるとリンクできるのに、 -all_load だけではリンクが通らない場合がありました。なのでやっぱり必要なときはまず -ObjC だけを試してみて、それでも駄目なら両方設定するのがいいみたいですね。


余談ですが、上記の内容を調べていたとき、リンカとかローダについて詳しく学ぶには以下の本がよいとオススメしていただきました。

Linkers and Loaders (日本語訳版もありますが、訳がひどいので英語版の方がよいとのことです。ここでは日本語版のリンクはあえて紹介しません)
http://linker.iecc.com/

4789838072リンカ・ローダ実践開発テクニック―実行ファイルを作成するために必須の技術 (COMPUTER TECHNOLOGY)
坂井 弘亮
CQ出版 2010-08

by G-Tools


KindleかiBooksで欲しかったのですが、残念ながら紙の本しかないですね・・・><

2011年5月5日木曜日

atos を使ってアプリのクラッシュログを symbolicate する方法

iOSアプリがクラッシュするとクラッシュログがデバイスに残され、 Xcode のオーガナイザーからログを取得してバグの原因を解析できるのは皆さんご存知の通りだと思います。このとき、基本的には Xcode がクラッシュログがの中のシンボルを自動的に読める状態にしてくれる (symbolicate) のですが、どうも Xcode 4 になってからこの symbolicate がいまいちよく動いてくれないので、手動で symbolicate をする方法を調べてみました。

参考にしたページは以下の通り。
http://stackoverflow.com/questions/1460892/symbolicating-iphone-app-crash-reports


■atosの使い方

symbolicate をするには Xcode に付属している atos というコマンドラインツールと、ビルドの際に生成される dSYM と呼ばれるファイルを使います。

まずは dSYM ファイルを探します。 Xcode 4 の場合は、デフォルトで *~/Library/Developer/Xcode/DerivedData/プロジェクト名-ランダムな文字列/Build/Products/ビルド設定名/アプリ名.app.dSYM* に生成されるようになっているはずです。

dSYM ファイルが見つかったら、コンソールから atos を実行します。 atos の使い方は以下のとおりです。
atos -arch アプリがクラッシュしたデバイスのアーキテクチャ -o アプリ名.app.dSYM/Contents/Resources/DWARF/アプリ名 クラッシュした関数またはメソッドのアドレス
実際にやってみるとこんな感じです。
cd ~/Library/Developer/Xcode/DerivedData/MyProject-xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx/Build/Products/Debug-iphoneos/
atos -arch armv7 -o MyApp.app.dSYM/Contents/Resources/DWARF/MyApp 0x00072ce6
これで指定されたアドレスが symbolicate され、シンボル名および元のソースコード上の行数まで表示してくれます。超便利です。


■注意点

何回か試してみましたが、ときどき実際にクラッシュしたシンボルと違うシンボルが表示されることがあるみたいです。上記で紹介したやり方が間違っているのか、それともそういうものなのかわからないのですが・・・すんません>< しかしその場合でもだいたい表示されたシンボルの近くが問題の原因だったため、いまのところ参考ぐらいには使えています。

2011年5月3日火曜日

Xcode のビルド設定で $(inherited) を使って設定を継承する



AppleのXcode 2のころのドキュメントによるとXcodeのビルド設定は以下の順に設定内容が解決されていきます。
  1. ユーザーのデフォルトの環境変数設定(たいていは ~/.MacOSX/environment.plist で指定されている)
  2. Xcodeのビルトインデフォルト設定
  3. Xcodeのアプリケーション設定(これはXcode 4では廃止されている気がします)
  4. ベースとなるビルド設定ファイル(元のドキュメントには書いてありませんが、.xcconfigファイルを使ってビルド設定を指定可能です)
  5. プロジェクトのビルド設定
  6. ターゲットのビルド設定
  7. コマンドラインから起動した場合は、コマンドラインのビルド設定フラグの値
このとき、下位の設定は上位の設定を上書きして使用するようになっているのですが、ここで上位の設定をそのまま受け継いで使いたい場合には、設定項目に$(inherited)という特殊な値を指定することが可能です。

2011年4月23日土曜日

KeychainItemWrapper を改造して、複数の Keychain Item に同時にアクセス出来るようにしてみた

※2011/04/23現在での情報です。以下の問題は全て Apple に対して報告いたしましたので、ひょっとしたら将来的に修正されるかもしれません。


現在の仕事にて課金情報を安全にアプリケーション内に保存したいということになり、それならばということで iOS に最初から用意されている Security.framework を使って Keychain 領域に情報を保存するアプリを作ることにしました。この Security.framework は全てC言語にて実装されており、そのまま使うと非常に取っつきづらいです。そこで、 Apple がサンプルコードとして提供している GenericKeychain プロジェクトKeychainItemWrapper クラスを使って Keychain 領域にアクセスすることにしました。

最初は問題ないように見えたのですが、実はこの KeychainItemWrapper クラス、Version 1.2には深刻なバグがあります。それは、複数の KeychainItemWrapper クラスのインスタンスを使って複数の識別子を持った情報を保存しようとすると、同時に一種類しか保存できなくなる(二つめを保存しようとするとステータスコード25299が返却されて保存できなくなる)というものです。

原因を調査した結果、以下のページに記載されている内容が問題だとわかりました。
http://useyourloaf.com/blog/2010/3/29/simple-iphone-keychain-access.html
The combination of the final two attributes kSecAttrAccount and kSecAttrService should be set to something unique for this keychain. In this example I set the service name to a static string and reuse the identifier as the account name.
サンプルで提供されている KeychainItemWrapper クラスにはこれらの一意となるキーが指定されておらず、単に検索用の kSecAttrGeneric だけが指定されていたため、一意キーの指定がおかしくなって二つ目の Keychain アイテムが保存できなくなっていた、というわけです。

そこでこちらの問題を修正した KeychainItemWrapper クラスをご用意しました。
https://gist.github.com/938375

ライセンスは元となるAppleのオープンソースライセンスに準拠します。改変・再配布・利用すべて自由ですが、その際ソースコードの最上部にあるAppleのライセンス条項コードは絶対に改変しないでください。Apple先生に何か言われても私は知りませんよ><


■修正版 KeychainItemWrapper の使い方

基本的には通常の KeychainItemWrapper と何ら変わりません。
// インスタンスを作る
KeychainItemWrapper *wrapper = [[KeychainItemWrapper alloc] initWithIdentifier:@"com.akisute.keychain.KeychainTestApp.item1"
serviceName:@"com.akisute.KeychainTestApp"
accessGroup:nil];

// 値を保存する
// いったんresetKeychainItemしているのはmyValueがnilのとき保存されているデータを削除したいから
// 基本的に値(kSecValueData)として保存できるのはUTF-8のNSStringのみです。内部的にNSDataに変換されてKeychainに保存されます。
// それ以外の情報を保存したい場合はすみませんが未対応です>< Base64文字列にするとかJSON文字列にするとか工夫して回避してください><
NSString *myValue = @"abesi";
[wrapper resetKeychainItem];
[wrapper setObject:myValue forKey:(id)kSecValueData];

// 値を取り出す
NSString *resultValue = [wrapper objectForKey:(id)kSecValueData];
NSLog(@"resultvalue = %@", resultValue);

iOS 3の UIScrollView はスクロールが発生しない状態では内部の UIView のタッチが取れない

iOS 3以前と iOS 4以降で大きく内部実装が変わったクラスがいくつかあります。 UIScrollView はその中の一つですが、ここではその中でもかなり厄介なバグを紹介します。

iOS 3の UIScrollView は、スクロールが発生しない状態(すなわち UIScrollView.bounds.size >= UIScrollView.contentSize のとき)では内部の UIView のタッチが取れません。タッチが取れないというのは、要するに内部の UIView に実装してある touchesBegan, touchesMoved, touchesEnded などが呼び出されないということです。情報元はこちら。
http://www.iphonedevsdk.com/forum/iphone-sdk-development/1345-uiscrollview-subview-touch-problem.html
Looks like as if the scrollview blocks any touches when the content rectangle is smaller or of same size as its bounds. Really strange behaviour.
ほんと Really strange behavior ですよ Apple センセ。

回避策として、iOS 3では UIScrollView.contentSize を調整して、常にスクロールが発生するような状態にしておけば大丈夫です。 iOS 4以降でしたらこの問題は発生しません。


2011/05/02追記: @k_katsumi さんから突っ込みいただきました。
http://twitter.com/#!/k_katsumi/status/61690186664378368

以下のように delaysContentTouches プロパティと canCancelContentTouches プロパティを NO に設定する方がどうもお行儀がよいようです。
scrollView.delaysContentTouches = NO;
scrollView.canCancelContentTouches = NO;

UIButton でアニメーションする画像を表示させたい

UIButton でアニメーションする画像を表示させたいときは、 UIButton.imageView.animationImages プロパティを使うことで簡単にアニメーションを実装させることができます。さっそくサンプルを書いてみます。

以下、 iOS 3.2 および iOS 4.0 以降にて確認しております。
UIButton *button = [UIButton buttonWithType:UIButtonTypeCustom];

NSArray *animationImageNames = [NSArray arrayWithObjects:@"animation1.png", @"animation2.png", @"animation3.png", nil];
NSMutableArray *animationImages = [NSMutableArray arrayWithCapacity:[animationImageNames count]];

for (NSString *animationImageName in animationImageNames) {
UIImage *image = [UIImage imageNamed:animationImageName];
[animationImages addObject:image];
}

[button setImage:[animationImages objectAtIndex:0] forState:UIControlStateNormal]; // 大事
button.imageView.animationImages = animationImages;
button.imageView.animationDuration = 2.0;
[button.imageView startAnimating]; // 大事、忘れるとアニメーションしません

[self.view addSubview:button];
UIButton.imageView.animationImages プロパティを使う際に注意する点がいくつかあります。
  • 必ず最初に setImage:forState: メソッドを使って何らかの画像を表示させるようにすること。通常の画像を表示させるようにしないと、 UIButton.imageView が画面に表示されません。
  • iOS 4.0以降ではこのプロパティでセットした画像は UIButton の frame に合わせてリサイズされて表示されますが、 iOS 3.2 以前ではリサイズされずそのままの大きさで表示されますので、注意が必要です。