2012年1月29日日曜日

xxd を使って画像などのバイナリデータをソースコードに含める方法

iOS向けのライブラリやフレームワークを作成しているときに、どうしても画像などのバイナリデータをライブラリやフレームワークに含めたくなる時があります。たとえばUI系のフレームワークなどですね。このようなときに、たとえば静的ライブラリ(.aと.h)やフレームワーク(.framework)とセットで画像を一緒に同梱し、ユーザーのXcodeプロジェクトに一緒に含めてもらうという方法もあるのですが、この方法だと画像名がユーザーのプロジェクトに含まれている画像とかぶったりしてはいけませんし、管理が面倒になってしまいます。また、ライセンスがプロプライエタリなライブラリでは、画像などのリソースをあまり積極的にユーザーに公開したくないというニーズがあったりします。

そこでxxdツールのご紹介です。岸川先生に教えていただいたのですが、xxdというツールを使えばバイナリデータをC言語のヘッダファイルとして簡単に出力することができるらしいのです。これを使ってバイナリデータをライブラリ内部のソースコードの一部として配布してみましょう。

xxdはvimに同梱されているので、最初からMac OS Xについてきます。使い方も非常に簡単です。
xxd -i Sample.png
とすると、
unsigned char Sample_png[] = {
  0x89, 0x50, 0x4e, 0x47, 0x0d, 0x0a, 0x1a, 0x0a, 0x00, 0x00, 0x00, 0x0d,
  0x49, 0x48, 0x44, 0x52, 0x00, 0x00, 0x07, 0xfd, 0x00, 0x00, 0x04, 0x73,
//中略
unsigned int Sample_png_len = 589903;
このような感じでバイナリデータがC言語のヘッダファイルになって出力されます。あとはこれをNSDataにして、UIImageを生成することができます。NSDataを作る際には余計なデータコピーが発生しないdataWithBytesNoCopy:length:freeWhenDone:を使うことをお勧めします。
NSData *data_Sample_png = [NSData dataWithBytesNoCopy:Sample_png length:Sample_png_len freeWhenDone:NO];
UIImage *image = [UIImage imageWithData:data_Sample_png];

2012年1月24日火曜日

Jenkins を iOS アプリ開発に導入してみた (gcov編)


前回 はSenTestKitに続いてGHUnitを導入して、Jenkins上でGHUnitによるテストの自動実行を行いました。今回はさらにステップアップして、gcovを使用してコードカバレッジを取るようにしてみようかと思います。


■gcovを使ったコードカバレッジの取得(Xcode 4.3版)

Xcode 4.3の場合は以下の参考ページで紹介されている方法がオススメです。実機ででもシミュレータでも動作してお得です。
http://www.cocoabuilder.com/archive/xcode/314794-xcode-4-3-moved-libprofile-rt-how-to-reference-it-now.html
http://www.infinite-loop.dk/blog/2012/02/code-coverage-and-fopen-unix2003-problems/
https://github.com/InfiniteLoopDK/ILTesting
  1. Generate Test Coverrage FilesとInstrument Program FlowにYESを指定する
  2. http://www.infinite-loop.dk/blog/2012/02/code-coverage-and-fopen-unix2003-problems/で紹介されているILProfilerCompat.cを組み込む(これによってfopen$UNIX2003によるエラーを防ぐ)
これだけで大丈夫です。


■gcovを使ったコードカバレッジの取得(Xcode 4.2版)

【2012/03/15追記】こちらの方法はXcode 4.2が前提となっており、Xcode 4.3以降は動作しません!

gcovとはgccに付属されているC言語用のカバレッジ測定ツールです。これを使うことで、C言語と、その拡張であるObjective-Cのコードカバレッジをバッチリ取得することができます。ということで早速プロジェクトに組み込んでみましょう。幸いにしてすでに先駆者の方がいらっしゃいました。
http://tech.naver.jp/blog/?p=706
基本的に上記に記載されている通りの手順で導入すれば簡単にgcovによるコードカバレッジの取得ができますが、実際にやってみたところ幾つか補足があるので追記します。

先ほど紹介した記事では/Developer/usr/lib/libprofile_rt.dylibの追加と-lgcovの指定両方を行なっているのですが、私が試したところどちらか片方だけで成功するということがわかりました。具体的には以下のとおりになります。

1. /Developer/usr/lib/libprofile_rt.dylibを使うパターン
2. -lgcovを使うパターン

それぞれ見ていきます。

1. /Developer/usr/lib/libprofile_rt.dylibを使うパターン

/Developer/usr/lib/libprofile_rt.dylibをプロジェクトに追加し、Other C Flagsの-fprofile-arcs -ftest-coverageを設定すればOKです。それ以外の手順は必要ありません。
このパターンですとスムーズにgcovの結果を出力することができましたが、残念ながらこの方法はSimulator上でしか使用できません。というのも、/Developer/usr/lib/libprofile_rt.dylibがそもそもarmv6, armv7用のバイナリを含んでいないという問題があるのと、ライブラリ探索パス"/Developer"以下がDeviceビルド時に勝手にiphoneos.sdk以下の/Developerに置換されてしまうため、ビルド時にlibprofile_rt.dylibをリンカが発見できずエラーになる問題があるためです。基本的にSenTestingKitのようなSimulatorでしか実行しないビルドターゲットでやるのが良いと思われます。

2. -lgcovを使うパターン

参考: http://stackoverflow.com/questions/5101014/code-coverage-not-showing-results-using-xcode-gcov/5140459#5140459
-lgcovをOther Linker Flagsに追加し、Generate Test Coverrage FilesとInstrument Program FlowにYESを指定すればOKです。それ以外の手順は必要ありません。
このパターンですとlibgcovはarmv6, armv7でも動作するので実機でのカバレッジ取得ができるのですが、問題はそのままの設定でビルドして実行すると実行時にクラッシュします。これはlibgcovが実行時にカバレッジデータを書きだす際に、デフォルトの設定ではiOSのサンドボックスの外にアクセスしようとするため書き出しに失敗してしまうのが原因です。したがって上記参考URLに従ってGCOV_PREFIX環境変数を使いサンドボックス内部にカバレッジデータを書きだすように指定してやる必要があります。
この方法は環境変数を実行時に設定する必要があって面倒なのと、カバレッジデータが書き出される箇所がJenkinsのビルドディレクトリの中ではなくiOSシミュレータまたは実機のサンドボックスの中になってしまうため、Jenkinsからカバレッジの取得を行うのが困難になってしまう問題があります。

今回は1. のパターンを採用し、SenTestingKit上でSimulatorビルド時のカバレッジ取得だけを行うことにしました。GHUnitでも実機上での動作を諦めれば問題ないのですが・・・まだ課題が多い感じですね。

ビルド設定ができたらビルドして、きちんとgcovコマンド経由でカバレッジが取得できていることを確認しましょう。


■gcovrを使ってCoberturaのXML形式に変換する

gcovのカバレッジデータの取得ができるようになったら、今度はJenkinsと連携させるために、gcovの出力をCoberturaというJava環境のカバレッジ計測ツールの出力するXML形式に変換する必要があります。これはJenkinsがgcovのカバレッジデータ出力の集計に対応していない為です。っていうかgcovの出力は単なるタブで区切られた文字列で人間以外にはとても優しくないので集計ができないのです。
ここで、Python製のgcovrというツールをJenkinsサーバマシンに導入します。 gcovrをgcovの代わりに使うことで、CoberturaのXML形式で結果を出力できるようになるほか、カバレッジ計測対象となるファイルを簡単にフィルタリングできる(たとえばテストケースクラスのカバレッジなんか集計してもしょうがないので除外するなどできる)のが大きな魅力です。
http://wiki.hudson-ci.org/pages/viewpage.action?pageId=45482230
https://software.sandia.gov/trac/fast/wiki/gcovr

インストールはMacマシンであれば非常に簡単で、以下のコマンドを打つだけです。
sudo easy_install gcovr
インストールが完了したら、あとは
gcovr --xml --output=cobertura-report.xml build/
とかやれば一発でbuildディレクトリ配下のすべてのカバレッジを計測結果を集計してXML形式で書きだしてくれます。
ここでもし、テストケースのカバレッジは除外したいなどという要件がある場合は、
gcovr --xml --exclude=".*/.*Test(s)?\.[(c)(cpp)(m)(mm)]" --output="cobertura-report.xml" build/
などとすればOKです。


■JenkinsのCoberturaプラグインを使って結果を集約する

CoberturaのXML形式で結果が取れるようになってしまえばあとは楽勝です。JenkinsにCoberturaプラグインをサクっとインストールして、
https://wiki.jenkins-ci.org/display/JENKINS/Cobertura+Plugin
あとは以下のようにJenkinsのジョブ設定を書いてしまうだけです。先述の通り、SenTestingKit上でSimulatorビルド時のカバレッジ取得だけを行いたいので、既存のSenTestingKit用単体テストジョブのXcodeビルドの後でgcovrを実行するシェルスクリプトを実行してやれば一発です。


カバレッジが取れるようになると断然見栄えがしますね。

2012年1月23日月曜日

Jenkins を iOS アプリ開発に導入してみた (GHUnit編)


前回 はSenTestKitを用いてJenkins上で単体テストの自動実行を行いました。今回はGHUnitを使った単体テストの自動実行にチャレンジしてみたいと思います。またついでといっては何ですが、単体テスト時に必要になってくるモックを作成するためのライブラリOCMockも同時に導入してみようと思います。


■なぜGHUnitを使うのか

GHUnitを使うことで、SenTestingKitと比べて以下のようなメリットが得られます。
  • 非同期処理のテストを行うための仕組みが用意されている(GHAsyncTestCase)これをSenTestingKitないし他のテスティングフレームワークでやろうとすると大変骨が折れます。
  • .app形式(要するに実際のiOSアプリケーション)でテストを実行するため、UIApplicationやUIWindowといったUIコンポーネントを使うクラスのテストが可能になる。UIテストの支援をするための仕組みも最近のGHUnitには追加されている。
    • SenTestingKitの"Logic Test"では想定通りに動作しないUIKitやFoundationのクラスが幾つかあり、中には純粋なロジックで使いそうなクラスも含まれている。そのためSenTestingKitではテストできないロジッククラスが発生する場合があるので、そういう時はGHUnitを使うと良い。
    • 参考: https://gist.github.com/1662887
  • 実機上でテストを実行できる。そのため実機でのみ発生するバグをつかまえることが可能。
  • SenTestingKitのテストケースをそのまま実行できるため上位互換として使用できる。
逆にGHUnitにはSenTestingKitと比べて以下のようなデメリットがあります。
  • Xcode 4で統合されたUnitTestingの恩恵に預かれない。すなわちCmd+U一発でテストケースを実行することができない。Xcode経由だとCmd+Rでアプリケーションとして起動して、その後起動したアプリのテスト実行ボタンを押す手間が必要になるため、開発のテンポが乱されてしまう。特にTDDを採用している場合には深刻。
  • 上記問題を回避するためCUI経由でテストを実行することもできるのだが、Xcodeのエディタと連携しないため、どこがエラーになっているのかが一目でわかりづらい。
  • カバレッジの取得が楽。SenTestingKitをシミュレータ上で実行している時が一番やりやすい。これについては別の記事で解説します。
これを踏まえると、以下のように使い分けができるようになります。
  • SenTestingKitは純粋なロジックの単体テストを実行したいときに良い。Xcodeからすぐに実行できて一瞬で結果がコード上に出るので、開発のテンポを乱さない。TDDに向いている。
  • GHUnitは非同期なAPIを持ったクラスの単体テストを実行したいときに良い。またUIApplication, UIWindowといったUIコンポーネントと結合したり、通信やファイルアクセスなどの外部リソースとの結合をおこなった状態でのテストを作る際にも向いている(純粋な単体テストともユーザー受け入れテストとも異なるため、仮に結合テストと呼ぶことにする)ので、そういったものが必要な場合には最高の選択肢となる。
プロジェクトの開発方針や開発対象によってどのようなテストが必要になるのかが異なってくると思いますが、どれか1つだけ必要であればGHUnitを選択し、きちんとしたXPでやりたいプロジェクトはSenTestingKitに単体テストをやらせ、ユーザー受け入れテストに KIF などを採用し、その中間を埋める必要があればGHUnitも導入する、というのが良いのではないかと考えています。ちょっと面倒ですけど。


■GHUnitを導入する

以下のリポジトリからコードを取得して、XcodeからビルドすればOKです。
https://github.com/gabriel/gh-unit
注意点として、GHUnitは.framework版がそのままgithubからダウンロードできるのですが、
https://github.com/gabriel/gh-unit/issues/69
このような問題が報告されており使えないので、githubからソースコードをクローンしてきて、
cd Project-iOS
make
でビルドしてできたGHUnitIOS.frameworkを使うようにしてください。

frameworkをビルドしたら自分のプロジェクトに追加して、GHUnit用のビルドターゲットを作ります。
http://gabriel.github.com/gh-unit/docs/appledoc_include/guide_install_ios_4.html

ビルドターゲットができたら、次は試しにテストケースを追加してみて、問題なくテストが走るか確認。
http://gabriel.github.com/gh-unit/docs/appledoc_include/guide_testing.html

最後にCUI(要するにxcodebuildコマンド経由)でビルドができるようにします。これをやらないとJenkinsと連携できません。
http://gabriel.github.com/gh-unit/docs/appledoc_include/guide_command_line.html


■OCMockを導入する

以下のリポジトリからコードを取得して、XcodeからビルドすればOKです。
https://github.com/erikdoe/ocmock
iOS向けビルドはスタティックライブラリ用のビルドしか用意されていませんので、どうしてもフレームワークが良いとこだわる人は頑張ってください>< そうでなければ非常に簡単です。ビルドしたら成果物をそのままプロジェクトに突っ込めばすぐ使えるようになります。
OCMock自体の使い方にはここでは触れませんが、例えば以下のようなテストケースが作れたりします。

- (void)testOCMock
{
    // Creating a new stub object from class
    {
        id mockedObject = [OCMockObject mockForClass:[NSString class]];
        STAssertThrows([mockedObject length], @"Mocked object raises exception because the fake method is not ready yet.");
        STAssertThrows([mockedObject isKindOfClass:[NSString class]] , @"Mocked object can't even call isKindOfClass: because it's not ready.");
        STAssertFalse([mockedObject class] == [NSString class], @"Mocked object is not a kind of the target class.");

        [[[mockedObject stub] andCall:@selector(mockedLength) onObject:self] length];
        STAssertEquals([mockedObject length], (NSUInteger)100, @"Mocked object returns the fake value.");

        [[[mockedObject stub] andReturn:@"AllYourBaseAreBelongToUs"] lowercaseString];
        STAssertEqualObjects([mockedObject lowercaseString], @"AllYourBaseAreBelongToUs", @"Returns mocked value.");
        STAssertEquals([mockedObject length], (NSUInteger)100, @"Previously mocked methods are still valid.");
    }

    // Method Stubbing for existing object
    {
        NSString *stubTargetObject = @"I am a stub target.";
        STAssertEquals([stubTargetObject length], (NSUInteger)19, @"The original implementation of the length method.");

        id mockedObject = [OCMockObject partialMockForObject:stubTargetObject];
        STAssertTrue([mockedObject isKindOfClass:[NSString class]] , @"Mocked object is a kind of the target class.");
        STAssertEquals([mockedObject length], (NSUInteger)19, @"Mocked object returns the original value.");

        [[[mockedObject stub] andCall:@selector(mockedLength) onObject:self] length];
        STAssertEquals([mockedObject length], (NSUInteger)100, @"Mocked object returns the fake value.");
        STAssertEquals([stubTargetObject length], (NSUInteger)100, @"Stubbed target object also returns the fake value.");
    }
}
- (NSUInteger)mockedLength
{
    return 100;
}


■Jenkinsと連携させる

最後にJenkins側でビルドターゲットを作りましょう。
http://gabriel.github.com/gh-unit/docs/appledoc_include/guide_ci.html

こんな感じの設定になると思います。

あとはいつもどおりジョブを回してみて問題がないか確認すれば完了です。前回ご紹介したようなSenTestKitの単体テストジョブがうまく回っていれば、それをコピーしてきてちょっと設定を変えれば簡単にできるとおもいます。

2012年1月21日土曜日

Objective-C がこの四年間でどれぐらい進化したのか一目でわかるテストケース

Twitterに流したら思ったよりも好評でしたので、ブログにも上げておきます。

こちらがiOS 2地点でのNSURLConnectionクラスを使った非同期通信のテストケース。

こちらがiOS 5でのNSURLConnectionクラスを使った非同期通信のテストケース。

Blocksはやっぱり偉大です。一つしかテストケースがないうちはまだマシなのですが、これが10個とかになると楽さが全く違ってきます。ぜひためしにURLだけ変えて同じテストケースを10個作ってみてください。iOS 5のBlocksを使ったコードはほとんどコピペだけで終わりますが、iOS 2でのdelegateを使ったコードは他にも変更しなければならない点が多数出てくるはずです。

また実際にこのコードを走らせてみると、理由はよくわからないのですがiOS 5で追加されたAPIを使ったコード(Blocks)のほうがそうでないコードよりも毎回2倍程度(0.1秒程度)高速に動作しているみたいです。ちょっと謎ですが、新しいAPIにはパフォーマンス面でのメリットもありそうです。GCDのおかげかな?

2012年1月20日金曜日

Jenkins を iOS アプリ開発に導入してみた (SenTestKit編)


最近、iOSアプリの開発でも継続的インテグレーション(CI)を取り入れていくプロジェクトが増加傾向にあるようで、各種ツールやライブラリ、ノウハウが出回ってきているように感じられます。そこで私も早速iOSアプリ開発でのCI導入を試してみることにしました。今回の導入試験では、以下のような環境を想定して行いました。
  • iOSアプリの開発を、Xcode 4.X系のプロジェクトとして行う。
  • VCSにはgitを採用し、githubの公開リポジトリをリポジトリサーバーとして使用する。
  • CIサーバにはMacを採用し、プロジェクトをビルドするためにXcode 4.Xをインストールしておく。


■必要なツールを準備する

CIといったら、まずは何はなくともJenkinsです。
http://jenkins-ci.org/
ここでは導入について詳しくは挙げませんが、私は以下の本を参考にしました。
https://gihyo.jp/dp/ebook/2011/978-4-7741-4952-3

続いてJenkinsのプラグインを導入します。
これでJenkinsの準備はだいたい完了です。
あとはVCSのgitですが、こちらは準備が出来ているという想定で進めます。


■余談:xcodebuildの使い方

JenkinsのXcodeプラグインを使えば、自分で面倒なantのbuild.xmlを書いたり、ビルドスクリプトを用意しなくても、JenkinsのGUI上でビルド設定を行うことが出来ますが、念のため基本を理解しておくべく、xcodebuildというツールを使ってみます。xcodebuildはXcodeプロジェクトをCUIからビルドするためのツールで、Xcodeに付属しています。JenkinsのXcodeプラグインも内部的にはこいつを使用しています。

基本的な使い方の例は以下の通り。
xcodebuild -project MyApp.xcodeproj -configuration Release -target MyApp clean build
xcodebuild -project MyApp.xcodeproj -configuration Debug -target MyAppTests -sdk iphonesimulator5.0 clean build
xcodebuild -project MyApp.xcodeproj -configuration Debug -target MyAppTests -sdk iphonesimulator clean build
上の例ではデフォルト設定のiOS SDKを用いてビルドターゲットMyAppがReleaseビルドされます。次の例ではiPhone Simulator 5.0 SDKを用いてビルドターゲットMyAppTestsがDebugビルドされます。一番下の例では、手元にある最新のiPhone Simulator SDKが使用されるようです。また -target の代わりに -scheme を使うことも出来ます。ビルドに使うことができるSDKの一覧を得るためには、
xcodebuild -showsdks
を使えばよいです。

ビルドアクションにはclean, build以外にもarchiveとかあるのですが試していないので詳細は不明です。しかし残念ながら、少なくともtestアクションがないことは確認しました。そのため、Xcode上で Cmd+U を押して実行できる単体テストが、xcodebuild経由では実行できません。これについては後ほどまた触れます。


■Xcodeプロジェクト側の準備

Jenkinsによる自動化を行うためには、まずはXcodeプロジェクト側を修正して、xcodebuildツールにより単体テストが実行できるような状態にして置かなければなりません。そのため先にXcodeプロジェクト側の設定を修正します。Xcode 4でテストケース付きの新規プロジェクトを作るとテストケース実行用のターゲットが自動的に用意されると思いますが、先述の通りこのターゲットはxcodebuild経由では実行できないため、以下の画像の様にUnit Testing -> Test Hostを削除して対応します。


このように設定を変更することで、UIWindowやUIApplicationを使わなければならないテストが実行できなくなりますが、それ以外のテストはXcodeからもxcodebuildからも実行できるようになります。試しにxcodebuildを使ってテストターゲットを実行し、テストが走っていることを確認してください。


■Jenkins側の準備(ジョブの設計)

続いていよいよJenkinsの設定に移ります。プラグインは導入してあるので、あとはジョブを作るだけです。Xcode連携のプラグインが入っていれば楽勝です。今回はシミュレータビルドで単体テストを行うので、ビルド後の処理でテスト結果の集約を行い、test-reports/*.xmlを指定しましょう。


デバイスビルドでリリース用のビルドを作る場合には、ビルド後の処理でビルド成果物の保存を行い、build/Debug-iphoneos/*.ipa(必要ならdSYMも)などを指定しておけば良いかと思います。デバイスビルドをするにはビルドをするマシンのKeychainにcodesign用の証明書と鍵が格納されている必要があるので注意してください。Technical VersionやMarketing Versionの値を指定すれば、自動的にInfo.plistに指定されているCFBundleVersionやCFBundleVersionShortStringを置換してくれるので非常に便利です。


ジョブを作ったら早速実行してみましょう。おそらくビルドだけならあまり苦労せずに通ると思います。私は10回目のビルドで完全に問題なくビルドが回りだすようになりました。

2012年1月15日日曜日

gdb で void* 型の変数をデバッグする

C言語で実装されたライブラリやアプリケーションでは、汎用的な型として随所で void* が使用されますが、これをgdbからデバッグすると、そのままでは型情報が無いためタダのポインタとして扱われてしまいます。これではデバッグ時の都合がよろしくないです。
(gdb) print 0xfee65c0
$1 = 267281856
(gdb) print (void *)0xfee65c0
$2 = (void *) 0xfee65c0
こんなとき、この void* が指し示している先の型がわかりきっている場合は、その型でキャストしてやって:
(gdb) print (struct imap_session_state_data *)0xfee65c0
$4 = (struct imap_session_state_data *) 0xfee65c0
(gdb) print $4
$5 = (struct imap_session_state_data *) 0xfee65c0
参照先にアクセスすればきちんと中身が見えます:
(gdb) print * $4
$6 = {
  imap_session = 0xfee6560,
  imap_mailbox = 0xfee6230 "INBOX",
  imap_flags_store = 0xfee6490,
  imap_ssl_callback = 0,
  imap_ssl_cb_data = 0x0
}
(gdb) print $6->imap_session
$7 = (mailimap *) 0xfee6560
(gdb) print * $7
$8 = {
  imap_response = 0xfee6090 "FETCH completed",
  imap_stream = 0xfeecc90,
  imap_progr_rate = 0,
  imap_progr_fun = 0,
  imap_stream_buffer = 0xfee6a00,
  imap_response_buffer = 0xfee6a20,
  imap_state = 3,
  imap_tag = 4,
  imap_connection_info = 0xfee64d0,
  imap_selection_info = 0xfee6030,
  imap_response_info = 0xfee60e0,
  imap_sasl = {
    sasl_conn = 0x0,
    sasl_server_fqdn = 0x0,
    sasl_login = 0x0,
    sasl_auth_name = 0x0,
    sasl_password = 0x0,
    sasl_realm = 0x0,
    sasl_secret = 0x0
  },
  imap_idle_timestamp = 0,
  imap_idle_maxdelay = 1740,
  imap_body_progress_fun = 0,
  imap_items_progress_fun = 0,
  imap_progress_context = 0x0
}
これでデバッグがはかどりました。

2012年1月2日月曜日

2011年のふりかえりなど

あけましておめでとうございます。年も開けましたので、2011年のふりかえりをやってみて、2012年の抱負を考えてみたいと思います。

■やってみたこと
2010年の途中からiOSアプリの開発担当になったのですが、2011年は始めて一年中iOSアプリの開発に携わることができました。ということでダイジェスト。
  • 1月は前年度から引き続きアプリの修正案件を行なってました。ずいぶんひどく炎上した一年のスタートになったのですが、炎上したプロジェクトでしか学べないものというのはたくさんあるものだと痛感させられました。主に案件がどうして燃えるのかとか、何が死亡フラグか、など。自分一人ではどうにもならないので、急遽助っ人に助けてもらいましてなんとか収拾。助っ人の方々、あの時は本当にありがとうございました><
  • 2月ぐらいからBPRという自社開発のフレームワークとそれを使ったアプリの開発などをしていました。外部に公開するライブラリを組むのは初めてということで、実に勉強になりました。中身の実装もなかなかうまくいったと思ってます。
  • その後ちょっとした案件をこなしてましたが、ここでは複数案件の並行進行を余儀なくされたため、またも自分一人ではどうしようもならない事態に。うまい具合にアルバイトの人に仕事をお願いしたりする必要に迫られるなどしました。
  • 5月〜6月が今年一番の正念場でした。それぐらい難しい案件と他の案件を並行で進めていたのですが、ずいぶん自分の設計からミスをしてしまい、自分の限界を知ることになった気がします。主にCore DataまわりとAPI通信実装まわりの限界がこの案件ではっきりと分かりました。それだけではなく、グループで仕事するときの死亡フラグとか、炎上案件の燃え方とか、これまた大いに学ばされました。
  • 7月からはずっと一本のアプリに集中して新規実装および修正を行なっていました。これまでの案件と打って変わってあまりにもサクサク進んだもので、受託開発での「お客さんの力量」の大事さを実感。むしろ自分のほうがお世話になりっぱなしで申し訳ない気持ちでした。この案件では試しにこれまでの社内ライブラリや設計の基本をすべて捨てて新しい方式でやってみたのですが、大いに成功したところもあればひどく失敗したところもあり、結果としてこの挑戦は正解だったと思っています。またとある理由でopensslのコードを読んだりしたなど、より低レイヤーな部分の知識が限定的ながら得られてきました。
まとめると、これまでにない難易度のアプリの開発に携われて成長できたのと、自分一人ではどうにもならない場面を何度も経験し、仲間の力の偉大さに気付かされたのが今年の収穫だったと思います。

■Keep
去年良かったので続けたかったことはこんなところ。
  • いろんな技術に手を出す。一年以上積み重ねてきたおかげで、ずいぶんと「一番いいやり方」と思われるiOSアプリの開発手法がわかってきたのですが、その方法に固執するとよりよい方法を見落としたり、時代についていけなくなると思ったのであえて別の方法を試し、結果としてよりよいライブラリやプラクティスを学ぶことができたのが実に良かったので、今年もチャレンジしていきたいところです。またClojureをvの人に薦められてやってみて、これまたずいぶんと刺激を受けたので、良いとされる言語やフレームワークに手を出してみてその設計思想を学び取るのは今年もやっていきたいですね。
  • 積極的に仲間に頼る。去年はずいぶんと仲間のみんなに助けて頂きました>< お陰様でずいぶんとスタンドプレーで無理やり解決しようとしてソウルジェムが濁るようなことがなくなったかと思います。今年も自分以外の周りに視野を広げつつ、困ったときに助けていただけるようにもっと人間的に良い人になりたいなーと思ってます><

■Problem
去年よくなかった、またはまだまだ改善の余地があるのはこんなところですかね。
  • 基礎力が足りない。低レイヤーな部分の知識が絶望的に足りない。これはPython温泉の際に指摘されたことで、実に悔しいのですがたしかに通信はHTTPより下のレイヤが殆どわかっておらず、言語はObjective-CがわかってもC/C++がわかってない。アルゴリズムの知識も足りなければ、基本的な数学知識も甘い。
  • さらなる設計力の向上が必要。ずいぶんとよくはなりましたが、それでもまだライブラリやSDKの実装のために必要なレベルの設計力がまだ不足しているように感じられます。
  • グループでの開発手法。自分一人の案件というのがほとんどだったので、たまにチーム戦をやるとひどくミスを連発して、見積もりを間違えたりレビュー不足からひどい炎上を招いたりと失敗が続いているため、グループでの開発のやり方を本気で考えなければならないと痛感させられています。
  • テストの仕方。単体テストと、結合テスト。テストの自動化事態はGHUnitのおかげでずいぶんと進んできたのですが、通信を含んだりファイル操作をするテストが単体テストに紛れ込んでいたりして、自動化の妨げとなっています。SenTestKitとモックを使ったほんとうの意味での単体テストと、それ以外のテストをきちんと分ける開発手法を編み出していきたいです。

■Try
ということでそれを踏まえて、今年はこんな感じのことに挑戦したいです。
  • より低レイヤーな知識の学習。TCP/IPとUDPは必修、できればTCP上でmsgpackあたりのRPCプロトコルを自分で実装できる程度にはなりたいと考えています。CとC++の知識も増やしていきたいです。
  • グループでの開発手法を学びたいです。あとはコミュ力向上。私は自分勝手で人の話を聞かず一度良いと感じたらその手法を信じこんでやまない(人に押し付ける傾向がある)ので、たとえその手法が実際に良かったとしても、チーム全体になじまずマイナスの影響を及ぼしている可能性があります。そういったことをなくすにはどうするか?ということで複数の開発手法を学ぶというのと、人の話を聞いてそれを採用する、これに尽きるでしょう。
  • テストの仕方の改善とCIの導入。まずは単体テストの完全自動化と、リリースビルドの日次生成からはじめ、徐々に取得する集計データの量を増やしていく、例えばカバレッジの計測は簡単に思いつきますし、GoogleやMSはバグが発生しやすい箇所を予め計算する方程式を持っているそうで、そういうのを日次で集計できれば全体の品質に寄与できる可能性があります。