前回 はSenTestKitを用いてJenkins上で単体テストの自動実行を行いました。今回はGHUnitを使った単体テストの自動実行にチャレンジしてみたいと思います。またついでといっては何ですが、単体テスト時に必要になってくるモックを作成するためのライブラリOCMockも同時に導入してみようと思います。
■なぜGHUnitを使うのか
GHUnitを使うことで、SenTestingKitと比べて以下のようなメリットが得られます。
- 非同期処理のテストを行うための仕組みが用意されている(GHAsyncTestCase)これをSenTestingKitないし他のテスティングフレームワークでやろうとすると大変骨が折れます。
- .app形式(要するに実際のiOSアプリケーション)でテストを実行するため、UIApplicationやUIWindowといったUIコンポーネントを使うクラスのテストが可能になる。UIテストの支援をするための仕組みも最近のGHUnitには追加されている。
- SenTestingKitの"Logic Test"では想定通りに動作しないUIKitやFoundationのクラスが幾つかあり、中には純粋なロジックで使いそうなクラスも含まれている。そのためSenTestingKitではテストできないロジッククラスが発生する場合があるので、そういう時はGHUnitを使うと良い。
- 参考: https://gist.github.com/1662887
- 実機上でテストを実行できる。そのため実機でのみ発生するバグをつかまえることが可能。
- SenTestingKitのテストケースをそのまま実行できるため上位互換として使用できる。
逆にGHUnitにはSenTestingKitと比べて以下のようなデメリットがあります。
- Xcode 4で統合されたUnitTestingの恩恵に預かれない。すなわち
Cmd+U
一発でテストケースを実行することができない。Xcode経由だとCmd+R
でアプリケーションとして起動して、その後起動したアプリのテスト実行ボタンを押す手間が必要になるため、開発のテンポが乱されてしまう。特にTDDを採用している場合には深刻。
- 上記問題を回避するためCUI経由でテストを実行することもできるのだが、Xcodeのエディタと連携しないため、どこがエラーになっているのかが一目でわかりづらい。
- カバレッジの取得が楽。SenTestingKitをシミュレータ上で実行している時が一番やりやすい。これについては別の記事で解説します。
これを踏まえると、以下のように使い分けができるようになります。
- SenTestingKitは純粋なロジックの単体テストを実行したいときに良い。Xcodeからすぐに実行できて一瞬で結果がコード上に出るので、開発のテンポを乱さない。TDDに向いている。
- GHUnitは非同期なAPIを持ったクラスの単体テストを実行したいときに良い。またUIApplication, UIWindowといったUIコンポーネントと結合したり、通信やファイルアクセスなどの外部リソースとの結合をおこなった状態でのテストを作る際にも向いている(純粋な単体テストともユーザー受け入れテストとも異なるため、仮に結合テストと呼ぶことにする)ので、そういったものが必要な場合には最高の選択肢となる。
プロジェクトの開発方針や開発対象によってどのようなテストが必要になるのかが異なってくると思いますが、どれか1つだけ必要であればGHUnitを選択し、きちんとしたXPでやりたいプロジェクトはSenTestingKitに単体テストをやらせ、ユーザー受け入れテストに
KIF などを採用し、その中間を埋める必要があればGHUnitも導入する、というのが良いのではないかと考えています。ちょっと面倒ですけど。
■GHUnitを導入する
以下のリポジトリからコードを取得して、XcodeからビルドすればOKです。
https://github.com/gabriel/gh-unit
注意点として、GHUnitは.framework版がそのままgithubからダウンロードできるのですが、
https://github.com/gabriel/gh-unit/issues/69
このような問題が報告されており使えないので、githubからソースコードをクローンしてきて、
cd Project-iOS
make
でビルドしてできたGHUnitIOS.frameworkを使うようにしてください。
frameworkをビルドしたら自分のプロジェクトに追加して、GHUnit用のビルドターゲットを作ります。
http://gabriel.github.com/gh-unit/docs/appledoc_include/guide_install_ios_4.html
ビルドターゲットができたら、次は試しにテストケースを追加してみて、問題なくテストが走るか確認。
http://gabriel.github.com/gh-unit/docs/appledoc_include/guide_testing.html
最後にCUI(要するにxcodebuildコマンド経由)でビルドができるようにします。これをやらないとJenkinsと連携できません。
http://gabriel.github.com/gh-unit/docs/appledoc_include/guide_command_line.html
■OCMockを導入する
以下のリポジトリからコードを取得して、XcodeからビルドすればOKです。
https://github.com/erikdoe/ocmock
iOS向けビルドはスタティックライブラリ用のビルドしか用意されていませんので、どうしてもフレームワークが良いとこだわる人は頑張ってください>< そうでなければ非常に簡単です。ビルドしたら成果物をそのままプロジェクトに突っ込めばすぐ使えるようになります。
OCMock自体の使い方にはここでは触れませんが、例えば以下のようなテストケースが作れたりします。
- (void)testOCMock
{
// Creating a new stub object from class
{
id mockedObject = [OCMockObject mockForClass:[NSString class]];
STAssertThrows([mockedObject length], @"Mocked object raises exception because the fake method is not ready yet.");
STAssertThrows([mockedObject isKindOfClass:[NSString class]] , @"Mocked object can't even call isKindOfClass: because it's not ready.");
STAssertFalse([mockedObject class] == [NSString class], @"Mocked object is not a kind of the target class.");
[[[mockedObject stub] andCall:@selector(mockedLength) onObject:self] length];
STAssertEquals([mockedObject length], (NSUInteger)100, @"Mocked object returns the fake value.");
[[[mockedObject stub] andReturn:@"AllYourBaseAreBelongToUs"] lowercaseString];
STAssertEqualObjects([mockedObject lowercaseString], @"AllYourBaseAreBelongToUs", @"Returns mocked value.");
STAssertEquals([mockedObject length], (NSUInteger)100, @"Previously mocked methods are still valid.");
}
// Method Stubbing for existing object
{
NSString *stubTargetObject = @"I am a stub target.";
STAssertEquals([stubTargetObject length], (NSUInteger)19, @"The original implementation of the length method.");
id mockedObject = [OCMockObject partialMockForObject:stubTargetObject];
STAssertTrue([mockedObject isKindOfClass:[NSString class]] , @"Mocked object is a kind of the target class.");
STAssertEquals([mockedObject length], (NSUInteger)19, @"Mocked object returns the original value.");
[[[mockedObject stub] andCall:@selector(mockedLength) onObject:self] length];
STAssertEquals([mockedObject length], (NSUInteger)100, @"Mocked object returns the fake value.");
STAssertEquals([stubTargetObject length], (NSUInteger)100, @"Stubbed target object also returns the fake value.");
}
}
- (NSUInteger)mockedLength
{
return 100;
}
■Jenkinsと連携させる
最後にJenkins側でビルドターゲットを作りましょう。
http://gabriel.github.com/gh-unit/docs/appledoc_include/guide_ci.html
こんな感じの設定になると思います。
あとはいつもどおりジョブを回してみて問題がないか確認すれば完了です。前回ご紹介したようなSenTestKitの単体テストジョブがうまく回っていれば、それをコピーしてきてちょっと設定を変えれば簡単にできるとおもいます。