本日からついにApple Watchの実機がお目見えとなりました。私も早速Apple Storeに行って試着・試用してきたのですが、予想以上にアプリ開発に影響がありそうな点が多数見つかりましたので、思うところをブログ記事にまとめて公開しようかと思います。
■小さい、とにかく小さい
Apple Watchの実機を身につけてまず最初に感じるのがその圧倒的な小ささです。この小ささというのは
- これまでのAndroid Wearデバイスのどれと比べても感じる相対的な小ささ
- Apple Watch上で表示されているUIを見て感じる絶対的な小ささ
の2つの要素から感じられます。
試しに私が身につけているAndroid WearデバイスとApple Watch Standard 42mmを並べて写真をとってみたのですが、見ての通り42mmモデルですら表示領域がずいぶんと小さいのがわかります。
その上Apple WatchのUIは全体的にAndroid WearのUIと比べて密度が高い用に感じられます。
こちらのブログに具体的な例があるのでぜひ参照していただきたいのですが、見ての通り同じアプリでもApple Watchのほうが詰まったUIになっています。ただでさえデバイス自体が小さめな上に密度の高いUI、具体的にはアプリ内で常時上にナビゲーション領域が表示されたりする、ということでなおさら小ささが際立っているわけです。
小ささをより体感するために、iPhone 6の画面でApple Watch 38mmの画面サイズを表現してみました。
アイコンが一つにラベルが一つプラスアルファ程度がせいぜいの大きさしか無い、というのがよく分かるかと思います。
したがって繰り返し繰り返し随所で述べられていると思いますが、画面上に表示する要素は徹底的に少なくする必要があります。私も十分に少ない要素だけを画面に表示するように心がけていたつもりでしたが、実際にデバイスに触れたあとに見返すとまだまだ要素が多すぎるぐらいです。少なすぎるのではと心配になるぐらいまで減らしてちょうどいいのではないでしょうか。
Appleの標準のアプリなどでかなり高密度なUIを採用しているものもありますが、そこは真似しないほうが良いと考えています。具体的には標準のマップアプリなどは38mmモデルの上では細かすぎて地図を読み取るのが極めて困難でした。
■Glanceこそがすべて
Apple Watchのインターフェースのナビゲーションは以下の図のようになっています。
基本は時計フェイスが表示されていて、そこから竜頭を押すとHomeに遷移してアプリを選択して起動することができます。時計フェイスを下にスワイプすると上からNotification Centerが表示され、上にスワイプすると下からGlanceが表示されます。Glanceは左右スワイプで次々に閲覧することができます。感覚的にはGlanceはiOSデバイスにおけるWidgetのようなもので、常時Widgetが時計フェイスの下に並んでいるようなイメージをするとわかりやすかったです。
このインターフェースの中でアプリができることで、最も重要になってくるのがGlanceです。操作してみてわかったのですが、Home画面からアプリを起動するのはただでさえ小さいWatchの画面上に無数の小さいアイコンが並ぶため困難苦痛を極めます。したがって必然的にアプリの状態を確認したりアプリを起動するのはGlanceを使うのが最も楽でスピーディで良いということになります。GlanceこそがApple Watchアプリにおけるすべての窓口と言えそうです。ここをどれだけ便利に使いやすく見せるかによってアプリの価値が変わってくるかもしれません。
■ネイティブアプリは速いが転送は遅い?
気になるApple Watchの動作速度ですが、まず通常の用途ですとかなりサクサクと動作しました。時計フェイスから通知センターに遷移したりGlanceを見たり、Glance間を切り替えたりするぶんには素晴らしい応答速度で、手元のAndroid Wearデバイスよりも機敏に感じました。
これがアプリとなってくるとだんだんと遅さが感じられる場面が出てきます。気になった点としては、
- いくつかのGlanceについてロードが終わらない、ないしロードが遅すぎる。マップ・天気・株価が該当。
- GlanceまたはHomeからのアプリの起動が遅いときがある。フィットネスで該当。
- フィットネスで「開始」ボタンを選択してから実際に開始するまでに明らかに感じられる遅れがあった。
- マップアプリについてはロードが遅く、地図が表示されるのも遅い。
これらから推測するに、おそらくネイティブでアプリが動作している部分に関しては素晴らしいパフォーマンスが得られているものの、本体側のiPhoneからデータを転送している箇所に関しては顕著にパフォーマンスが落ちているのではないか思われます。
今回体験する事ができた実機にはサードパーティ製のアプリが入っていなかったので、我々開発者が作ったアプリに関してどの程度のパフォーマンスが得られるのかは全く不明ですが、この調子ではあまり良い結果が得られないかもしれません。今後のSDKの拡張でApple Watchネイティブのアプリが作れるようになるまでは、本体からデータを転送する頻度および転送量を少しでも削減できるようなつくりを目指すしかなさそうです。
■妄想とか将来の話
その他現状はサードパーティ開発者からは使えないのですが、将来的に面白くなりそうだと思った点を挙げます。
まず竜頭コントロールについてですが、現状竜頭コントロール入力をアプリ側から取得することができないのはみなさんご存知のとおりです。触った感じ竜頭自体は非常に良く出来ていたのですが、画面のどの箇所が竜頭でコントロールできるのか出来ないのかがいまいちよくわからないという問題があるように思えます。最も顕著な例は時計フェイスのカスタマイズUIで、これはカスタマイズする箇所をタップしてから竜頭で項目を選択するという仕組みになっているのですが、直感的に非常にわかりづらかったです。きちんと考えて統一的に使われていれば便利かもしれませんが、画面のタッチとの併用がほぼ必須なため竜頭だけでコントロールできなかったりなど、課題が山積みのように感じます。
逆にForce Touch(強く力を込めて押しこむようにタップする)機能ですが、これは非常に優れているように感じました。ダブルタップと特性は似ていますが、精密動作を必要とせずTapticエンジンによるフィードバックによって入力成功が伝わる点を考えてもダブルタップより圧倒的に優れている入力方式と言えます。現状Force Touchは自由に使うことができずメニューの表示用途に限定されていますが、これはまずForce Touchという操作の存在を確実にユーザーに理解してもらうという意味で良いと思います。この操作が広まればゆくゆくはiPhoneやiPadにもForce Touch搭載されることが確実でしょうし、アプリは積極的にForce Touchを取り入れていくべきと思いました。
将来的にForce TouchがiPhoneに導入されるとなると、iOSのAndroidに対する現在の弱点であるメニューボタンの不在を補う重要な役割になってくるかもしれませんね。さらにゲームでも大変有効に使える入力方式に間違いありません!夢が広がります。
Force Touchといえばその対となるTapticエンジンも非常に素晴らしかったです。Force Touch時のフィードバック、通知時のフィードバック、友人へのハートビートの送信、すべてで全く異なる触覚が伝わってくるのがまさに見事でした。まったく画面を見なくても触覚の違いだけで何が起こっているのかを判別できるほどです。現状Tapticエンジンを自由に触ることはできませんが、もし開放されたらTapticからのフィードバックだけで画面を全く見ないでも十分に使えるアプリが作れるかもしれません。全くユーザーを煩わせることない究極のUIになりうるかもしれませんね。
最後にGlanceについてちょっと触れます。基本的に現在サードパーティのアプリがGlanceでできるのは情報を表示するだけで、Glanceがタップされた時の挙動もWatchアプリが起動するだけに固定されてしまっています。
ところがAppleのネイティブアプリである心拍数Glanceについては、なんとGlanceが表示された瞬間に心拍数が自動的に計測開始され、さらにボタンをタップするとダイアログが表示されるというつくりになっていました。すなわち機能が開放されていないだけでリッチなGlanceを作ることも可能なようです。先にGlanceこそがすべてだと述べましたが、このリッチなGlanceを作る機能が開放されたらApple Watchのサードパーティアプリの可能性は更に広がると思います。