2010年12月29日水曜日

ASIHTTPRequest を使って外部 API から非同期的に結果を取得してみる

ASIHTTPRequest という神の通信ライブラリを使って、うまい具合に外部 API から非同期的に結果を取得・解析して返すようなクラスをつくってみました。以前 NSOperation でやってみたバージョンは こちら。


■主な機能

元々の ASIHTTPRequest にある機能はもちろんご利用いただけます。多すぎて説明し切れませんので、以下の記事を参考にしていただければと思います><

http://d.hatena.ne.jp/ninjinkun/20101122/1290394265
http://macisv.jp/blog/?p=235

さらに今回私が作成した ASIAPIRequest にはこのようなおいしい特典がつきました。
  • POST のパラメータだけではなく、 GET のパラメータも楽々生成してくれるメソッドを用意しました。
  • 非同期実行時の通知方法が, delegate, blockに加え、さらに NSNotification による通知もサポートしました。
  • 非同期的に取得したレスポンスの値をパースするためのコールバックを用意しました。このコールバックメソッドをオーバーライドして、サブクラスで処理を行えば、この中の処理はすべて非同期実行されるため、 XML のパースが遅くて UI が固まったなんてことはもうありません。
  • おまけ的にタグとかつけられるようにしてみました。
その他、お使いになられる際に適当に ASIAPIRequest の中身を書き換え御社のプロジェクトに合うように調整するなどすると面白いと思います。自動的にログインパラメータをつけるようにしたりとか。


■ダウンロード

github にリポジトリを作りましたので、こちらから git でクローンするか、または master のソースコードをダウンロードしてください。

https://github.com/akisute/asi-http-request

タグが付与されていますが、これはクローン元のタグなので、当てにしないでください。常に master の先端をダウンロードするのが一番確実です。

ダウンロードしたら、 Classes ディレクトリと External ディレクトリの中身を適当に自分のプロジェクトにコピーして、プロジェクトに追加していただければOKです。最後に、以下のフレームワークをリンクしてください。
  • CFNetwork
  • SystemConfiguration
  • MobileCoreServices
  • CoreGraphics
  • zlib
ライセンスは元のライブラリに合わせて BSD ライセンスとします。


■使い方

最初に ASIAPIRequest を継承してサブクラスを作成します。
// APIAuthorize.h

@interface APIAuthorize : ASIAPIRequest {
}

// 認証APIのインスタンスを生成する
+ (id)apiWithUserId:(NSString :)userId password:(NSString :)password;

@end
では次にAPIインスタンスを生成するためのクラスメソッドをサブクラスの内部に作ってみましょう。
// APIAuthorize.m

+ (id)apiWithUserId:(NSString :)userId password:(NSString :)password {
NSURL *url = [NSURL URLWithString:@"authorize.json" relativeToURL:API_BASE_URL_STRING];
APIAuthorize *api = [APIAuthorize requestWithURL:url];
api.requestMethod = @"POST";
[api setPostValue:userId forKey:@"userId"];
[api setPostValue:password forKey:@"password"];
api.postRequestFinishedNotificationName = @"APIAuthorizeDidFinishNotification"; // POST 成功時に飛ぶnotificationの名前
api.postRequestFailedNotificationName = @"APIAuthorizeDidFailNotification"; // POST 失敗時に飛ぶnotificationの名前
return api;
}
最後にサブクラス内部でスーパークラスのメソッドをオーバーライドし、通信完了直後に呼び出される処理を記述します。たとえば、レスポンスが返ってきた際に、受け取ったレスポンスをパースして DB に保存したりします。このコールバック内部は UI スレッドとは別のスレッドで並列実行されているので、この中でどれだけ重い処理をしても UI は固まりません。その代わり UI を操作する処理はここでは行わないでください。クラッシュします。
// APIAuthorize.m

- (void)postRequestFinished {
// レスポンスステータスコードが異常系の場合はなにもしない
if (self.responseStatusCode != 200) {
return;
}

// レスポンスをパースしてオブジェクトにし、Core Dataに保存する
// 保存したオブジェクトをuserInfoに格納しておく
User *user = [User managedObjectFromJsonString:[self responseString]
inContext:[AppDelegate appDelegate].managedObjectContext];
[[AppDelegate appDelegate].managedObjectContext save:nil];
self.userInfo = [NSDictionary dictionaryWithObjectsAndKeys:
user, @"user",
nil];
}

- (void)postRequestFailedWithError:(NSError *)theError {
// なにもしない
}
tag プロパティを使って、同じAPIでレスポンスの種類を分けることができたりします。
// APIAuthorize.m

enum {
APIAuthorizeResponseTagUser,
APIAuthroizeResponseTagToken,
};

+ (id)apiWithUserId:(NSString :)userId password:(NSString :)password {
NSURL *url = [NSURL URLWithString:@"authorize.json" relativeToURL:API_BASE_URL_STRING];
APIAuthorize *api = [APIAuthorize requestWithURL:url];
api.requestMethod = @"POST";
[api setPostValue:userId forKey:@"userId"];
[api setPostValue:password forKey:@"password"];
api.postRequestFinishedNotificationName = @"APIAuthorizeDidFinishNotification"; // POST 成功時に飛ぶnotificationの名前
api.postRequestFailedNotificationName = @"APIAuthorizeDidFailNotification"; // POST 失敗時に飛ぶnotificationの名前
api.tag = APIAuthorizeResponseTagUser // このAPIのレスポンスはUser型だよーとタグをつけておく
return api;
}

- (void)postRequestFinished {
switch (self.tag) {
case APIAuthorizeResponseTagUser:
// Userオブジェクトを作る
break;
case APIAuthroizeResponseTagToken:
// Tokenオブジェクトを作る
break;
default:
break;
}
}
これで API 本体は完成したので、早速実行してみましょう。以下の4つの方法で実行が可能です。
  1. 同期実行
  2. 非同期実行、 delegate で結果を通知してもらう
  3. 非同期実行、 NSBlock で通信完了後の処理を行う
  4. 非同期実行、 NSNotification で結果を通知してもらう
1, 2, 3 については普通の ASIHTTPRequest と同じですので割愛します。 4 は私が新しく追加した機能で、 NSNotification の仕組みを使って実行完了通知を受け取ることが可能になります。たとえばこんな感じになります。
// 適当に認証とかする画面のViewController.m

- (void)viewWillAppear:(BOOL)animated {
[super viewWillAppear:animated];
// Notification通知を開始する
[[NSNotificationCenter defaultCenter] addObserver:self
name:@"APIAuthorizeDidFinishNotification" // さっき決めた文字列
target:self
action:@selector(apiAuthorizeDidFinish:)
object:nil];
}

- (void)viewDidDisappear:(BOOL)animated {
[super viewDidDisappear:animated];
// Notification通知をオフにする
[[NSNotificationCenter defaultCenter] removeObserver:self];
}

- (IBAction)startAuthorize {
ASIAPIRequest *api = [APIAuthorize apiWithUserId:self.userIdField.text password:self.passwordField.text];
[api startAsynchronomus];
}

- (void)apiAuthorizeDidFinish:(NSNotification *)notification {
// 認証完了時の処理
}
この通知はメインスレッドから呼び出されるので、自由に UI を操作することが可能です。

delegate と比べて、 NSNotification を使った通知の便利な点は以下の通り。
  • delegate を使う場合には、 delegate オブジェクトがメモリから消える前に delegate の始末を行う必要があるが、 NSNotification を使った場合にはその必要がない。自分を NSNotificationCenter から削除するだけでよいので、 API リクエストを比較的投げっぱなしにできる。
  • delegate とは違い、複数のオブジェクトで同時に通知を受け取ることができる。たとえば API を実行した画面とは全然違う別の画面二つで同時に通知を受け取ったりすることが可能になる。

■余談

この ASIHTTPRequest は本当にすばらしいです。最初にこの通信ライブラリを知ったときは、また良くあるただのちょっと便利なだけな通信ライブラリなんだろうと思い気にもとめなかったのですが、実際にコードを見てびっくりしました。私がほしかった通信ライブラリそのものだったからです。

私は通信ライブラリは NSOperation を継承して作るべきだと考えており、実際以前に試してみたことがありました。それは主に、
  • NSOperationQueue のシングルトンインスタンスが勝手に通信をすべて管理してくれるので、クラスの変数として通信クラスのインスタンスを保持しておかなくても良くなるかもしれない
  • NSOperation には依存関係を指定するメソッドがあるので、これを用いれば自動的に通信 A, B, C を順序通りに実行するなどできるかもしれない
  • NSOperation を継承すれば、将来 Apple の中の人がフレームワークを改善した際にマルチコア化した iPhone の CPU の恩恵を自動的に受けられるかもしれない
という考えがあったからです。そしたら見事にこの ASIHTTPRequest が NSOperation を継承して、しかも何かと問題の多い NSURLConnection を使わず NSStream とソケットを用いて自分で Run Loop を回すというすばらしい実装をしているじゃないですか!こりゃもうかないません。自分でやる必要が丸でなくなってしまいました。しかもそれだけではなく、
  • 現在全体の何%まで読み込みが完了したかを delegate で通知できる
  • 通信完了時に呼び出される delegate method はすべて main thread から呼び出されるので、 UI 操作をしても安全
という、まさにかゆいところに手が届く良さがすべてあります。惚れる。もうおそらく当分の間はこれ以上の通信ライブラリが現れることはないんじゃないかと言い切って良いぐらいすてきです。

アプリのビルド時に CSSMERR_TP_NOT_TRUSTED エラーが発生したときの対処法

http://d.hatena.ne.jp/drill256/20090820/1250752178
http://discussions.apple.com/thread.jspa?threadID=1630090

このエラーは、以下の証明書がすべて存在しないか、または Keychain Access 内でのステータスが、「この証明書は信頼されています。」ではないときに発生するようです。
  • Apple Worldwide Developer Relations Certification Authority
  • iPhone Developer または iPhone Distribution


上記の画像のように、「この証明書は信頼されています。」と緑色のチェックマーク付きで表示されている必要があります。そうでない場合は何らかの問題があります。

対処法は、
  1. まず何はなくともこれらの証明書がすべて存在するか確認する。 Apple Worldwide Developer Relations Certification Authority を忘れているケースが良くあります。
  2. 「この証明書は信頼されています。」になっていない場合には、証明書を選択して、「情報を見る」 -> 「信頼」 -> 「システムデフォルトを使う」 を選択する。「常に信頼する」ではダメです、エラーになります。
証明書をどのキーチェイン項目に入れていても問題はなさそうです。私の場合は WWDR をシステムに、 iPhone Developer をログインに入れていますが正常に動作しています。

2010年11月16日火曜日

iOS で正規表現を使う (3.0, 3.1, 3.2, 4.0)

iPhone / iPad アプリで正規表現を使いたいときはどうするのか調べてみました。


■iOS 4.0以上

NSRegularExpression があるのでそれを使えば万事解決です。


■iOS 3.2

http://blog.livedoor.jp/pnfhy316/archives/277806.html
こちらのブログでご紹介されているとおり、NSString rangeOfString:options: で NSRegularExpressionSearch を指定するのが楽です。

正規表現のグループ参照はできませんけれど、まぁしょうがないですかね。


■iOS 3.1, 3.0

http://d.hatena.ne.jp/KishikawaKatsumi/20081031/1225463896
こちらのブログでご紹介されているとおり、ライブラリを使うのがよいようです。

または最近調べてわかったのですが、 NSPredicate を以下のように使うと正規表現によるマッチングが可能になる模様です。
NSString *path = @"/path/to/img/img10001.png";
NSPredicate *predicate = [NSPredicate predicateWithFormat:@"%@ matches '.*/img[0-9]{5}\\.png'", path];
BOOL matched = [predicate evaluateWithObject:nil];
キモは NSPredicate の format として matches という構文が使えることと、その中で正規表現が使用できるところですかね。実機の iOS 3.X で試したわけではないのですが、 NSPredicate 自体が iOS3.0 から使用可能になっていることと、 NSPredicate format 関連のドキュメントを見ても特に利用制限とかは書いていなかったので、普通に3.0から使えるんじゃないかと思ってます。もしよろしければ動作報告いただけるとうれしいです。


■iOS 2.X

iOS界のIEだと思って忘れましょう。お客さんに「頼むから対応してくれ」と言われても突っぱねる(すでに全体の1%以下ぐらいのはず)のがベストです。